エンジニアの給料が上がらない原因は経済学を学べばわかるよ

こんにちは。なっかーです。

世界的に見ても、日本のエンジニアは給料が低いと言われています。

その原因については色々言われていますが、いまいち学問的な裏付けがないものも多く、断片的です。

そこで今回は、経済学部出身エンジニアのなっかーが、経済学の理論を使ってエンジニアの給料が上がらない様々な仮説を検証していきます。

本当は裏に色々数式や理論があるのですが、今回の記事では小難しい部分を省略して、理論の結論のみを述べていきます。

エンジニアの給料が上がらない原因を説明する15の仮説

社内でしか通用しない技術しか持っていないから説

最大にして、かなりシンプルな理由だと考えます。

エンジニアが会社内でしか通用しない特殊な技術しか持たないので、市場価値も低くて、転職もできず会社にしがみつくしかない。

会社はそんなエンジニアの足元を見て、賃金を安くするという理論です。

労働経済学では「企業特殊的熟練」と呼ばれ、日本の労働市場の特徴として数々の経済学者が提唱し、理論が確立されています。

モダンな技術を使うWeb系企業では当てはまりませんが、レガシーな技術の保守や社内独自フレームワークによる開発は企業特殊的熟練に当てはまります。

生活費保障仮説

労働経済学で、年功序列を説明するために用いられることのある学説です。

終身雇用を前提とし、企業は社員のライフイベントを想定し、それに必要な賃金を保障するというものです。

20代は独身だから安い、結婚して子供が生まれるとお金がかかるので給料は上がり、子供の学費や親の高齢化を理由に給料が上がるというイメージですね。

生き方が多様化し、女性の社会進出が進んだ今の日本では当てはまりませんが、高度成長期の日本では一定の説得力がありました。

ただし、未経験のエンジニアの初任給に関してのみ、この説で説明できます。

未経験のエンジニアは育成コストを考えると明らかに最初は赤字なのですが、無給で雇うというわけにはいかないので、ギリギリ生活できる賃金は上げようねということです。

地方よりも物価の高い東京の初任給が高いのも、この理論で説明できます。

保証賃金仮説

労働は苦労への対価であり、苦労が大きければ大きいほど給与は上がるという労働経済学の仮説です。

エンジニアでも下請けで3K(きつい、汚い、帰れない)の仕事をしていても、給料が上がらないエンジニアは山ほどいるので一見これは誤っています。

裏を返せば肉体的にはあまり消耗をせずに、快適な環境で好きなことを仕事にしていれば給料は安くていいよねという発想です。

いわゆるやりがい搾取もこれにかなり似ていて、ゲーム会社のエンジニアの給料が他のIT企業より一回り給与が安いというのも、この仮説で説明できます。

やりがい搾取ってキャッチーな言葉ですけど、ちゃんと学術的な裏付けもあるんですよね。

限界生産力仮説

限界生産性というのは平たくいうと「そのエンジニアがいることでどれだけ生産性が上がったか」という意味です。

エンジニアの貢献した分だけ、給与は上がるというシンプルな仮説です。

いくら技術があっても、ビジネスに貢献できなければ給与は上がらないというのはこの仮説の通りです。

日本では海外と比べてビジネス視点が欠けているエンジニアが多いから、給与が安いという人もいます。

スペシャリストが重宝されず、ジェネラリストが評価される企業であれば十分に当てはまります。

一見正しそうな仮説ですが、一人一人のエンジニアの貢献を数字で測るのは非常に難しいという問題もあります。

オークションの原理が原因説

これはちょっとややこしいのですが、簡単にいうと、出品者に対して落札希望者が多ければ、勝手に値段はつり上がるということです。

逆にどんなにいいものを売っても、オークション会場に人が少なければ、手を挙げる人が1人しかいないという状況が起こりえます。

経済学の一番根本の、需要と供給の関係です。経済学ではこれを集積の経済とも言います。

この状況が特に起こりやすいのがクラウドソーシングです。

一つの仕事に対して、たくさんのエンジニアが「私はいくらでやります」とアピールをするとしましょう。

その中に一人でも相場を知らない人(Aさん)がいて、Aさんが異常に安い値段を出すと、周りがそれに引きづられたり、Aさんがそのまま受注する可能性が高くなります。

応募するエンジニアが多くなればなるほど、こうしたリスクは高まっていきます。

クラウドソーシングは企業が安く買い叩く仕組みと言われる一因です。他にも

  • 女性が少ない出会い系サイトでは、女性の魅力が劣っていても勝手にメッセージがくる
  • 野球選手がFA宣言をすると、11球団の争奪戦になって相場より年俸が上がる
  • エンジニアが転職をした途端に給料が上がる

というのも同様の要因です。

地方では競争原理が働かないから説

競争というのは経済学の根本にあり、健全な競争は市場を正しく機能させます。

逆に、競争が起きないとエンジニアの給与が不当に安く抑えられたりするのです。

特に東京や大阪、福岡以外の地方ではIT企業が極端に少ないために、健全な競争が起きません。

「給料が安いんで近くの会社に転職します」というわけにはいかないので、安くても文句は言えません。

東京ならエンジニア、IT企業が共に多数存在するので、健全な競争が起こります。これを都市経済学では「集積の経済」と呼びます。

上で述べたオークションの原理と似ていますね。

これをグローバルな視点から見れば、日本語しか喋れないエンジニアは日本でしか働けないので、英語が話せて世界中で働けるエンジニアより、不利となります。

地理的にも言語的にも世界から少し離れた日本で、独特のルールや給与水準が設定されているのも、この理論で説明できます。

大成功してプラットフォームを構築した企業が少ないから説

IT企業として大成功しプラットフォームを構築できれば、エンジニアを高給で雇う余裕が生まれます。

経済学的に、「独占」「寡占」と言われる状況を作れば利益を上げやすくなるという理論です。

儲かっている企業に行けば、給料が高くなると考えると直感的にも理解できるはずです。

  • LINE
  • Amazon
  • Facebook
  • Instagram
  • Twitter
  • Google
  • Apple
  • MicroSoft

日本でよく使われるプラットフォームも多くは海外のもので、日本のIT企業はその点では劣っています。

こうした会社が集積していると、エンジニアは高給で引き抜かれていくため、自然と給与の相場が上がっていきます。シリコンバレーではこの説がよく当てはまりますね。

近年では、メルカリ、Yahoo、mixiのように少なくとも国内でプラットフォームを構築して、エンジニアの給与を上げる動きも出てきました。

日本の解雇規制が厳しすぎるから説

日本は一度正社員として雇ってしまうと、企業の都合ではなかなか辞めさせることはできません。

労働者はすぐ辞める権利はあっても、会社は辞めさせられない、企業ばかりがリスクを背負っているようにも見えます。

企業はエンジニアに一生会社に居座られるリスクを背負っているから、その分給与を抑えられるという理論です。

この状況では労働者はリスクをあまり負わないため、保険に入っているのと似たような状況になります。

経済学的には「リスクシェアリング」という、保険料を決定する理論によって説明が可能です。

日本の正社員であれば、この要因を完全に排除することはできません。

独立してフリーランスになった途端に、税金を考慮しても給料が大幅にアップするというのは、この理論で説明できます。

そもそも初任給が安いから説

そもそも初任給が安ければ、一定のスピードで上がったとしても給料は相対的に低いままです。

ではなぜ初任給が低いのかというと、エンジニアの定義が広く、未経験の文系でもエンジニアになれるというの事情あります。

また、日本の大学の情報系の学部では実務で使える知識は得にくく、長期インターンをする層もまだごく一部です。

とりあえず、最低限生きていけるくらいの金を渡し、低い所得に慣れさせてしまうのが、会社の思惑です。

オフショア開発の方が安いから説

オフショア開発(人件費の安い海外で開発)の方が諸々のコストを含めても安い場合は、日本のエンジニアのライバルは発展途上国のエンジニアとなります。

ただ上から言われたことをこなすだけの人月商売でカウントされる低スキルなエンジニアには当てはまるでしょう。

しかし、この状況も東南アジア諸国の経済の発展と人件費の高騰によって終わると言われています。

むしろ日本のエンジニアが外国から安く買い叩かれることを心配するべきかもしれません。

中抜きされているから説

IT業界の多重下請け構造の下の方で働くエンジニアは、元請けとの間でいくつも会社が入っているので、マージンを抜かれて給与が安くなります。

この多重下請け構造の根本の原因は以下が挙げられます。

  • 日本のITに関する理解が薄く、エンジニアの地位が低い
  • 解雇規制が厳しいので、エンジニアの一時的な需要を賄うには外注するしかない
  • 学部や専門性に関係なく就活する日本の新卒一括制度

「中抜きされているから」というのは表面的な説明に過ぎず、より深いところの原因を考えることが重要です。

評価制度をあまり極端に使えないから説

エンジニアを正しく評価して給与に差をつけなければ、優秀なエンジニアから順番に辞めていってしまいます。

たとえ評価ができたとしても、それを給与に反映するのは難しいことです。あまり極端に実力を反映するのはリスクを伴います。

単純な例を考えて見ましょう。AさんとBさんの2人のエンジニアがいます。2人の年収は400万円で、同じIT企業に勤めています。

Aさんは一生懸命スキルを磨き、年収500万円に値する人材にまでなりました。

逆にBさんは勉強を怠り、スキルが陳腐化したため年収300万円に値する人材になってしまいました。

2人合わせて800万円の給料を見直して500万円と300万円にすれば、めでたしめでたしですが、そううまくいきません。

相当理解のある企業であっても、2人の技術力、貢献を正確に測ることは困難です。あまり差をつけすぎるとBさんが不満に思う可能性があります。

企業側は、「Aさんも給料が増えれば満足だろう」と考え、2人の年俸を450万円と350万円に設定します。

Bさんは得をした一方で、割りを食ったのはAさんです。こうして優秀なエンジニアはまた転職をするのでした。

ミクロ経済学ではこうした状況を「レモン市場」と呼ばれています。日本に限らず、会社に貢献した割りには給料が上がらないというのは、よくあることです。

日本の教育ではITへの理解が薄くなるから説

日本の小学校、中学校、高校までのカリキュラムは、ここ数十年ほとんど変わっていません。当然時代遅れにになります。

林修さんは「日本の教育制度は150年遅れている」とまで言っていますね。

教師の待遇も低いので、当然優秀な人が集まりません。ITリテラシーの低い教師が、ITに強い人を育てられるわけがありませんね。

これはエンジニアが育たないというだけでなく、日本全体のITに関する理解があまりにも低いということです。

ITやエンジニアの価値がわからない起業家がたくさん発生すると、割りを食うのはエンジニアです。

経営陣がエンジニアをただのコストの発生源と考えているならば、エンジニアがいくら経営陣を説得しても無駄です。

また、「金儲けは汚いもの」「会社に雇ってもらっている」「給与交渉などもってのほか」「辛くても我慢して働き続ける」という考えは日本の教育の洗脳であり、こうした考えが日本全体の労働者の地位の低下に繋がっています。

単なる統計的な問題説

エンジニアの定義が広すぎて、本来はエンジニアとも呼べない低スキルの人材までもが、エンジニアとカウントされているという説です。

技術的な理解がほとんどなく、下請けの進捗管理や単純作業しかしていない人が「システムエンジニア」と呼ばれて平均給与を押し下げているという見方もできます。

しかしこうしたシステムエンジニアは、上流工程にいることもあり、そこそこのお金をもらっています。

よって、この説明はあまり妥当とは言えません。

心理的に辞めにくい特殊な事情があるから説

数字や経済学では説明しきれない、何らかの事情で心理的に辞めにくい状況というのは確実に存在します。

そうした状況では、足元を見られて給与が安くされるのが通常です。

例えば以下のような状況です。

  • 未経験から拾ってもらったので恩義を感じる
  • 内定者インターンだから辞めると入社後に影響が出そう
  • 辞めると損害賠償を起こすと言われてビビる

どれもよく聞く事例であり、企業側は一定程度これらのことを想定した上で、採用を行っています。

エンジニアのキャリア戦略

以上のように、エンジニアの給与が上がらない原因は様々あり、それらが複合的に絡み合って給与は決まります。

逆に上に述べた要因を全て排除できれば、給料を上げることは比較的容易です。

次回の記事では、上の要因を排除するための具体的な戦略を述べていきます。詳しくは以下の記事をご覧ください。

経済学的に考えるエンジニアが給料を上げるための戦略

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